ラグビーと多様性
ラグビー日本代表
ラグビーワールドカップが初の自国開催で盛り上がっています。日本代表が快進撃を続けているのでなおさらです。
今回の日本代表選手の顔ぶれを見て気づくのはキャプテンのリーチマイケル選手をはじめ、多くの外国出身の選手がいることです。日本人が少ないことに違和感を覚える人も多いのではないでしょうか。
なぜこんなにも多くの外国人選手がいるのでしょうか。
日本に帰化していない外国人選手
外国出身の日本代表選手の多くは日本に帰化しています。リーチマイケル選手などがそうです。
一方で、帰化しないまま日本代表に選ばれている選手もいます。
ラグビーは他の競技と異なり、必ずしもその国の国籍を持つ必要がなく、他の要件を満たせばその国の代表になれます。したがって日本に限らず多くの国で外国出身の代表選手がワールドカップに出場しています。
ラグビーにおける代表選手
ラグビーでは「国籍主義」ではなく「協会主義」という独特の考え方があります。
- 国籍を持つ人が代表になれる→国籍主義
- 協会に属する人が代表になれる→協会主義
簡単にいうとその国の国籍が無くてもその国でプレーしていればその国の代表になれるわけです。
国籍を持たない選手が代表になる条件は、次の通りです。
- 本人の出生地がその国であること
- 本人の両親または祖父母のいずれかがその国出身であること
- その国で3年以上継続して居住していること(2020年以降は5年以上に変更)
このいずれかを満たしていればその国の代表選手になれます。一番多いのが3年以上継続居住の要件です。
国籍取得に比べるとかなり緩い要件です。このため日本代表選手31名のうち15名が外国出身者で占められています。
これは日本に限らず、ラグビー界では常識で、前回のワールドカップ出場国20カ国のうち10名以上の外国出身選手で構成されている国が6カ国もありました。
ラグビー代表規定の背景
ラグビーの歴史は、19世紀まで遡ります。当時イギリスではフットボールという競技が各地で行われていました。ルールは地域によりまちまちで、現在のラグビーの原型となったのは、イギリス中部ウォリックシャー州ラグビー町にあるラグビー校で行われていたフットボールです。
当時イギリスは大英帝国として南アフリカやオーストラリアなど多くの植民地を抱えていました。そして本国から支配している各植民地に赴いたイギリス人たちは、それぞれその地でラグビーの普及に努めました。そのような背景から旧植民地の南アフリカ、ニュージーランド、トンガなどは現在でもラグビーが人気スポーツとなっています。
一方で植民地からイギリス本土へやってくる人も多く、植民地をルーツに持つ人もイギリス国内で増え始めました。こういった人達の中でもラグビー選手がおり、植民地ではなく、本国での代表を期待される選手も出始めました。
ここで植民地出身者の代表資格が問題となりました。彼らを本国代表として認めるのかを決める必要に迫られましたのです。
ここで考えられたのが出生地と居住地という二つの観点です。出生地に関しては本人がその国籍を持たなく両親がその国出身であればよいというものです。居住地のほうはその国の国籍を持たなくてもその国に一定期間居住していればいいというものです。このような観点が取り入られているため、ラグビーにおける国籍を重視しない代表規定となっていったのです。
この考え方は現代でも受け継がれており、多くの外国出身代表選手が誕生しています。
このような多国籍日本代表ですが、あまりの外国人、あるいは外国人風の選手の多さに当初は私も違和感を覚えていました。しかし、彼らは日本代表としての誇りを持ち、献身的にプレーしています。彼らを含めた日本代表が一致団結しているさまは、感動すら覚えるようになりました。
ラグビー以外のスポーツ
大坂なおみ、八村塁、ケンブリッジ飛鳥、サニブランアブデルハキーム、ダルビッシュ有など、両親のどちらかが外国出身のアスリートが活躍する姿を見るのが日常的になってきました。外見上日本人に見えなくても、日本語が話せなくても、本人が日本人としての誇りをもって、日本人として競技するのであれば、自然と応援する、そんな環境になってきました。
国籍がどうの、人種がどうのというのにこだわること自体、ナンセンスになってきたということでしょうか。